スタッフコラム

2022.07.30

スタッフコラム

10億ドルオフショア債償還不能【世茂集団】借り換え困難で

中国メディアによると、中国の不動産大手の世茂集団(上海市)は3日、この日に償還期限を迎えた元本10億ドル(約1350億円)のオフショア社債について、元本と利息2375万ドルを支払えなかったと明らかにした。


厳しい資金調達環境で借り換えが困難になっているのに加え、冷え込む不動産市況が経営を圧迫していると説明した。


世茂集団は債権者に謝罪するとともに、債務再編協議を進めて「友好的な解決策」の取りまとめを目指すとしている。ただ、合意に至らない場合、正式に債務不履行(デフォルト)とみなされる可能性がある。社債はシンガポール証券取引所で発行され、利率は年4.75%。世茂集団は、上海や北京、広東省広州、深センなど中国の有力都市を中心に事業を展開し、高級住宅やホテル、ショッピングモール、オフィスビルなど数多くの優良資産を抱えている。しかし、当局の不動産業界に対する規制強化や事実上の金融引き締めなど経営環境の急変を受け、昨年後半に資金流動性の問題が表面化していた。


さらに今年に入り、中国各地の新型コロナウイルスの感染拡大が、窮迫する経営に追い打ちをかけた。今年1~5月の分讓不動産成約高は前年同期比72%減の342億6000万元(約6900億円)と大きく落ち込んだ。


世茂集団は急激な資金繰りの悪化を踏まえ、資産の処分を積極的に進めている。上海の一等地、北外灘(バンド)エリアにある未開発の商用地や北外灘沿いにある高級ホテル「北外灘茂悦ホテル」、広州市のニュータウン「広州亜運城」の開発プロジェクト権益、世界遺産の武夷山(福建省)にある超高級ホテルなど30以上の資産を次々と売却。ただ、債務の返済期限に間に合わず、同社の財務健全性に対する懸念は高まる一方だった。


同社の社債残高はオンショア、オフショア合せて約100億ドルと見られる。米モルガン·スタンレー・キャピタル·インターナショナル(MSCI)は6月22日、世茂集団と融創中国の中国不動産大手2社の株式について、長期間にわたり取引停止となったことを理由に、世界の株式を対象とした株価指数の構成銘柄から外した。


 

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